▲前回、大雨で登頂を断念した富士山。
トレッキングシューズからザックなど諸々買って結構な投資額、もと取れワンワンとばかり是が非でも年度内には登りたい。
同行するトッシー組の「レンタルで揃えたよ~」という驚愕の発言に心では俺もそうすれば良かったと思うも「ふーん」と冷静を装い迎えた当日。
残念ながら生憎と雨が降る天候で前回の残念な記憶が蘇るものの、まぁそうなりゃまた温泉行ってカラオケしてと楽しい代替案をワイワイと話しながら富士スバルラインの五合目を目指す。
小雨とガスが晴れない中、五合目の食事処で富士山カレーなるものを食べながら、宿泊先へ連絡したりと情報収集すると、登山は出来ると思うがご来光は見られないかもしれないという話。
それでも、既に過半数が7、8万円程度の投資をして、さらにこの日富士登山の為に休みを取ったパーティ。そりゃ引くに引けない。
そして僕たちは吉田口から頂上を目指すことに。例え天候が悪くても、登れるんだということだけで気分は良い。
しかもこの吉田口、最初は平坦な道、そしてゆるやかな下り坂が続くもんだから、何だ簡単じゃないかと思う位で歩いている間もちょっとワクワクできるわけです。
しかし、油断は禁物、疲れを感じようと感じまいと定期的に休みを取ることは忘れない!!
▲大きなトラブルもなく3時間程度で今回御世話になる7合目の鎌岩館(標高2,790m)へ到着。
山小屋だから覚悟はしていたけれど、スタッフの若いアルバイト男性陣も気さくでなかなか良いところ。
出されたハンバーグ定食はなかなか肉厚で美味しいし、量も十分ある。他の山小屋を過ぎる時にちらりと見えたレトルトカレーに比べたら全然いいよね。
そして、気になる寝どこ。
事前情報は持っていたもののここまでなのかと思う程窮屈。
布団一つに二人という使い方で、1人一つ寝袋が置いてある。そして隣の人との間隔もない!今回は隣に来る人はいなかったから良かったものの、他人だろうがなんだろうがギッシリ詰め込むパターンはやはり精神的にダメージあ大きいと思う。
なお且つ、身長180cm以上の方は恐らく足がちゃんと収まらないサイズ。身体を曲げなければならないし、まぁ寝る時に自由度が無いのは辛いところですな。
寝るというよりはご飯が食べられて、身体を横にすることができる場所と思う位がいいでしょう。
▲出発の時間は決められるんだけれど、深夜0時起床0:30出発で頂上ご来光コースというので、天候次第で決めることに。
22時頃に表に出てみると星空と期待できる天候・・・
そして、0時。
晴れ!
▲一気にテンションも高まって、頂上を目指すんだけれど、大変なのはここからだと思い知るのは、山小屋を出たところから。
8合目の太子館(標高3,100m)というところまでは険しい岩場が続く。出発前に鎌岩館の方からのアドバイスでは、ストックを使うよりも手足で登った方がいいというのは本当の話。
そしてこの頃から高度を本当に実感するようになる。休めば体力はすぐに回復するんだけれど、ほんの数メートル行くだけでも息が上がる。
険しい岩場を過ぎて暫く進むと登り坂に出る。しかし、やったなんて喜んでなんていられない。数メートル進んではゼーハーの繰り返し。しかも、9合目が全然見えてこない。
この高度との戦いで役に立ったのは水分補給のためのチューブ式バック。
いちいちバックから取り出さなくても適宜水分補給が出来るというのは本当に助かった。ちなみに僕の場合は3ℓ用を購入して、2.5ℓ位は持っていった。
前を見れば次の山小屋がすぐそこに見えるのに、近づかない。それでも休み休み、一歩一歩を繰り返すうちに標高3,400mの江戸屋に。
そこころには一面この景色。
遮るものなんて一つもない雲の上。あの上の伸びた雲の裏に太陽がある。
本当は頂上でご来光を目指してきたのに!と悔しさなんて一つもなく、ただただ、この景色が見られただけで気分も晴れやかな気持ちだ。
そんな景色を見ていると近くにいらした山小屋の方が「今日は奇跡だよ」と。
台風が近づき天候不良の中で今日この景色が見られるなんて誰も思わなかったという。確かに山の天気なんて誰にも予測できないのかもしれないけれど、今はただただ、この天気、空気を楽しもう。
ずっと見たかったこの景色。
素晴らしいだとか、綺麗とか、ここまでの道のりだとか、地球だとか、気高さだとか、色んなことが頭の中に噴き出てきたけれど、そんな言葉さえもが軽く思えてしまう「荘厳」という景色。
そして、この素晴らしい景色に人々がカメラと携帯とiPhoneをかざす風景を客観的に見てちょっと面白くなったり。
まぁ自分もそうか・・・hahaha
▲ひとしきりそんな世界を堪能した後は、さぁ頂上を目指そう。ちょっと登れば息も上がるけれど、もうちょっとだ!再び急な岩場と高度との戦いを経てようやく鳥居と看板だけの9合目。
だけれど、身体が思うように動かず登っては休みの繰り返しが続く。
そして振り返ると一面の雲海が広がっている。
この景色は高所恐怖症の自分にとってはちょっと恐怖だったりするんだけれどね。
吸いこまれそうな錯覚を覚えるんですな。
正面は険しい岩場、後ろは高所恐怖症、そして登れば高度との戦いでこの頃は正直頭も訳分かりません。
▲だから、頂上についた時はやったーという達成感や感動よりも、『終わった。もう登らなくていいんだ』っていう単純なこと。
それにしても標高3,776mだよ!
世界じゃないけれど、日本で一番高いところに自分の足で登ったんだ。
頂上では御土産物屋を過ぎて奥に行くとお鉢と言われる火口に近づきお鉢巡りなるものをやることもできるらしいんだけれど、「やってみよう!」なんて言葉、僕らのパーティーにはなく、記念撮影をしてさぁ下山だ!
半分位の時間で下山できるなんて夢の様なことだしと、まだこの時はこの後の試練なんてこれぽっちも思ってもいなかった。
本当に辛かったのは下山だった。
▲写真は登り途中で下山ルートを降りる方々を撮った写真なんだけれど、僕らがルートに入って暫く、雨が降ってきた。
そして、次第に強くなる。
この写真が嘘のような悪天候だ。
下も見えず上も見えずの悪天候で地面が滑り易い中の下り道はジグザグに曲がった道。
右へ降りては左に降りるの繰り返し。
しかも下っているうちに登りではなかった痛みがひざやももにくる。
これは正直体験した人でないと分からないだろう辛さだな。
レインウェアを着ていても下はポロシャツ程度の格好。晴れと雨では大違い。決して寒いわけじゃないけれど、肌に付く雨に打たれた生地は容赦なく体温を奪う。これで天気だったらもっと違うのかもしれない。
もっと楽しく会話しながら降りたのかもしれない。
実際、この日は周りの方々もかなりしんどい表情の方が多く、歓声はご来光時のみだったw
これね、もう何べん書いても伝わらないと思うんだけれど、本当にキツかった。
▲最後に5合目に到着した時に思ったことは頂上で思ったことと近いことだった。
『終わった。もう下らなくていいんだ』
この日は団体客も多く何組も頂上を目指していく。元気一杯の彼等、通り過ぎる時には「こんにちわ」の声も多い。
しかし、下山組側からそうした声はほとんどない。
それだけ辛い富士登山。
そんな富士登山は、実は学生時代から「いつか皆で登ろうぜ」と言っていたこと。毎年毎年、山開きのシーズンが来ると今年は登ろうと思ってきた。
それが、今年実現した。
来年山開きの時にも同じことを思うだろうかとこうして書いている今は思う。
だって、笑った数よりも辛い記憶の方が多かったってのは凄いもんねw。
でも、流れ星を3回見た。
自分の足で初めて見た雲海、天の川も見た。
全員登山初体験の誰1人も高山病にもならず、登頂できたのは本当に良かった。
▲雨で冷え、疲れ切った身体が求めるのは温泉ということで近くのふじやま温泉へ。
寝湯がたまらない。
温まった後はビールごくごく、そして皆とワイワイ。
「もう二度と富士山には登らない!」
と思いつつも、一度思いきり晴れた登山とか、突貫登山も経験してみたいなぁと思ったりもして・・・。
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